「遺言書」と聞くと、なんとなく知っている方は多いと思います。
『遺言書を書いたらすぐに効力が出る』、『家族は勝手に開けても大丈夫』・・・そんな都市伝説を信じていませんか?
今回は現場で良く耳にする”遺言書の誤解ベスト5”を行政書士の視点から、民法の条文根拠と共に解説します。
実際には、遺言書は本人が亡くなって初めて効力が発揮されます。
民法 第985条
・遺言は遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
生前はただの「意思表示の準備」に過ぎませんので、書いたらすぐに財産が動くと思うのは誤解です。
また、遺言書はいつでも撤回する事が出来ますので、本人の気持ちが変われば変更や破棄する事も可能です。
民法 第1022条
・遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
亡くなった方の自筆証書遺言書をご家族が発見されて、それに封印がされていた場合、例えご家族でもその遺言書を勝手に開けると過料の対象になってしまう事もあります。
開封には家庭裁判所の検認が必要になりますので、ご注意ください。
これは遺言書を見つけた者が、自己に都合の良いように改ざんする事を防ぐためになります。
ただし、自筆証書遺言書でも2020年7月から始まった「自筆証書遺言書保管制度」を使用していた場合と、公証人が作成して原本は公証役場で保管される「公正証書遺言」は、改ざんのリスクが低いため、開封しても問題ありません。
とは言っても慣れていない方が判断するのは難しいと思います。
遺言書らしき封筒を見つけた時や、もしそれを誤って開封してしまったときも専門家に相談する事をお勧めします。
民法 第1004条
・遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求をしなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
民法 第1005条
・前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処する。
財産が少なくても遺言書は有効です。
その証拠にこんなデータがあります。
・2020年度の「遺産分割事件の財産額」によると、1千万円以下の遺産で家庭裁判所で調停が成立した件数は2,448件で、これは総数7,234件の約34%に及ぶ
つまり、少額でも争いになる事は非常に多いのです。
例え相続人同士の関係が普段は良好であっても、いざ相続となった場合、もめてしまうケースも考えられます。
このような事を想定して遺言書を準備する事も大切な事です。
確かに公正証書遺言なら公証人と証人立会いの元、遺言書が作成されますので、形式的に強く争いの可能性は低くなりますが、内容によっては遺留分侵害額請求などで争いは起こり得ます。
遺留分侵害額請求とは、最低限保障されるはずの遺産(遺留分)を受け取れなかった相続人が、その不足分を侵害した相手に金銭で請求出来る制度の事です。
民法 第1042条
・兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第1項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 3分の1
二 前号に掲げる場合以外の場合 2分の1
2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第900条及び第901条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
◆遺留分権利者(請求できる人)
・配偶者
・子(直系卑属)
・直系尊属(父母など) ※子がいない場合のみ
◆遺留分割合
| 相続人の組み合わせ | 遺留分の全体割合 | 法定相続分 | 個々の遺留分割合 |
|---|---|---|---|
| 配偶者+子 | 全体の1/2 | 配偶者1/2、子1/2 | 配偶者1/4、子1/4 |
|
配偶者+直系尊属 |
全体の1/2 | 配偶者2/3、尊属1/3 | 配偶者1/3、尊属1/6 |
| 配偶者のみ | 全体の1/2 | 1 | 1/2 |
| 子のみ | 全体の1/2 | 1 | 1/2 |
| 直系尊属のみ | 全体の1/3 | 1 | 1/3 |
| 兄弟姉妹のみ | なし | 1 | 遺留分なし |
例えば公正証書遺言の内容が「配偶者に全ての財産を相続させる」という内容でも、その子がいた場合、遺留分侵害額請求権の行使により争いは起こりえるという事になります。
二人以上で同一の遺言書で遺言する事はできません。
これは「遺言者の真意を確保するため」、「遺言の撤回・変更の自由を守るため」に禁止されています。
民法 第975条
・遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。
複数人が同じ証書で遺言を作ると、互いの意思に影響を受けてしまったり、遠慮や圧力により真意と異なる内容で作成してしまう恐れがあります。
また、仮に作成した当時は真意であったとしても、気持ちが変わってしまう事もあるでしょう。
その時に一方だけで撤回できるかという問題が発生してしまい、遺言書の撤回・変更の自由という原則が確保出来なくなってしまいます。
いかがでしたか?
今回は遺言書について知っているようで意外と知らない内容を都市伝説としてまとめてみました。
遺言書は書く時はもちろん、受け取った人にも気を付けなければならない事があります。
せっかく遺言書を残したのに法律に定められた形式になっていないため、無効になってしまうケースもあります。
当事務所でも皆さまの遺言書作成、遺言執行のお手伝いを承っております。
何かご心配な点やご不明な点がございましたら何なりとご相談ください。
また、今後も皆さんが興味ありそうな内容を定期的に発信していきたいと思いますので、次回の更新もお楽しみに!